「バイオテクノロジー」(biotechnology)、すなわちバイオとは、「生物の特性を応用する技術」のことで、わかり易く言えば生物が持っている様々な働きを効果的に日常生活に取り込んで利用する技術ということになります。
現在では、この技術が各方面で広く利用されており、更に新しい技術の開発も進められています。このように進歩を続ける「バイオテクノロジー」ですが、その歴史は意外に古く、私たちが普段から食している発酵食品に微生物を利用したことに始まります。
ではこの微生物について少し触れておきましょう。
微生物の中の代表的なものとして、「細菌」・「カビ」・「酵母」があります。
「細菌」はこの3つの中で一番小さな生物で、ヨーグルトやキムチなどの食品を作るのに利用されます。 |
「カビ」は細長い細胞がつながった繊維状の生物で、味噌、醤油、チーズなどの食品を作るのに利用されます。 |
「酵母」は1つの細胞からなる生物で、お酒やパンなどの食品を作るのに利用されます。 |
また、たんぱく質の一種である「酵素」という物質は、医薬品や洗剤などに利用され、微生物と同様に「バイオテクノロジー」の一翼を担っています。
このように、私たちの周りでは、知らず知らずのうちに「バイオテクノロジー」が活躍しているのです。
コットン製のシャツやパンツなどには、肌触りをよくするために、「セルラーゼ」という酵素が使用されます。
病院では血液や尿の検査を行いますが、そのほとんどの検査に酵素が使用されます。これは血液や尿に含まれる複数の成分に対して、特定の成分にしか作用しないという酵素の性質の利用例の一つです。
生活排水や工場廃水から、環境汚染物質を取り除いて河川に戻す廃水処理施設では、主に微生物が廃水に含まれる有機物質を分解する役目を担っています。
ゴルフ場などの雑草除去にも微生物が役立っています。特定の種類の雑草だけを枯らせる微生物の性質を利用した除草剤がその一例です。
私たちの生活に欠かせない存在となった「プラスチック」は、一方で廃棄時の処理技術が完全でないため、廃棄物公害として社会問題となっています。
そこで現在、廃棄時に微生物によって分解される「生分解性プラスチック」などの研究開発が進められています。
エネルギーの基となる一般的な原料(化石燃料)は、その燃焼時に二酸化炭素(炭酸ガス)を発生させるため、地球温暖化の一因といわれています。
そこで、二酸化炭素を発生させない「水素」を原料とするエネルギーの実用化が注目されてきていて、現在、その「水素」をつくり出す性質を持った微生物の研究開発が進められています。